・構造設計の話
構造って言葉を、一般の方々はどうとらえているんでしょうか?
もう私も専門馬鹿化していて段々一般の感覚とずれてきてるんでしょうか?こんなこっちゃいけません。そんなもん聞いたこともなけりゃー考えたこともないってのが普通でしょうか。
建物は何らかの材料を使って作るわけなんですが、そのメインを何で作るかで、大きく3つに分かれます。
鉄筋コンクリート造と、鉄骨造と、木造です。厳密に言うと他にもまだまだ色んなものがあるんですが、一般になじみが深いものはだいたいこの3つに大別できます。このあたりはご存知の方も多いでしょう。
で、住宅の場合どの構造が多いかといえば、大差をつけて木造ということになるでしょうね。次に鉄骨造、鉄筋コンクリート造って順番かな?
どうしてでしょう?
ちなみに同じ規模で、同じようなもんをこの3つの構造で作ったとすると、お金がかかる順番は・・・木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造、となるでしょう。(あくまで一般論で)
なーんだ安い順にみんな選んでるんじゃん。んー確かにそういえなくもないんですねー。でもそれぞれの構造にはそれぞれいいところもあれば悪いところもあるんです。価格はもちろん構造決定の重要な要素ではあるけども、それだけで決まっているというわけではないでしょう。どんな家を建てるのが一番いいのか建て主も設計者も考えに考え抜いて構造は決まって行ってるに違いありません。でもやっぱり価格で決まってるってのもいなめないかなー。地域差もあって台風がよく来るってー事で沖縄では住宅も鉄筋コンクリート造が主流だったりします。
それぞれの構造の長短所を説明していると話はヒジョーに長くなってしまいますが、ざーと行きましょう。
まず木造です。大雑把に言ってしまうと贅沢いわなきゃ安くできます。でも防火性、耐震性は他の構造に一歩引けをとります。メンテナンスも割りとやんなきゃいかんですね。ただ加工性はいいし、自分でちょこちょこ手を入れたいなんて人にはもってこいだと思います。また自然素材なので木自体の調湿性や断熱性もかなり期待できます。あと最後に壊すときも壊しやすいです。特殊な考え方を入れないと壁が多くなりますし、後々のリフォームなんかでも何かと制約があります。
次に鉄骨造。人によっては耐震性は鉄筋コンクリート(長いので以下RCと呼びましょう)よりいいなんて人もいます。こいつのもっともいいところはやっぱり柱を少なくして、大きい空間を作れることでしょう。防火性能は木造以上RC以下ですかね。コストも一般的には同じく木造以上RC以下といわれてますが、なーんか最近は中国の建設ラッシュで、日本国内は鉄が足りないんだとか・・・。北京オリンピック以降は安くなるでしょうね。
最後にRC造。耐火性も耐震性もいいんですがなんたってコストが高い。あと重い。重いって事は敷地の状況によっては基礎工事にお金がかかるっつー事です(杭とか)。木造も鉄骨増も基礎はこのRCなので厳密に言うと混構造といえなくもないですね。メンテナンスは一番楽だと思います。断熱性はそれ自体はよくないですが、断熱材を使うのは他のどの構造でも同じなのでまあよしとしましょう。
木造住宅の構造
で、まあなんか予算上というわけでもないですが、最もポピュラーな木造住宅の構造についての考え方を紹介しましょう。
木造と一口にいってもその作り方はまーこれまたいろいろとあります。
ただ大人気なのは在来軸組工法と枠組壁工法でしょう。在来軸組みってのは日本でむかしっから作られてきたやりかたで、枠組壁工法はいわゆる北米方面から持ち込まれたツーバイーフォーに代表される作り方です。
結構在来木造の場合職人さんの腕で、出来上がりに差ができたりするのが今までだったんですが、枠組みの方は割とそういうものに左右されることなく構造的な基本性能が確保されるって言うんで一時期人気でした。ただ最近は工場での木材料の加工技術があがってきて、コスト的に有利な在来工法が人気急上昇です。
ということで、ここでは木造の中でも更に最も一般的な在来軸組みに関しての考え方を例に、構造のことを書きましょう。
まず構造ってのは何なのかって事ですが、あれ、さっきもおんなじこと言ってたって?あー木造だのRC造だのはどちらかというと何で作るかって言う構法の話なんで、こっからが本当の構造の話だということにしておいてください。
で、一言で言うと構造は住宅の場合、地震や台風で家が壊れたりしないようによーく考えようって事です。普通建物はなんでもこの構造ってやつを何らかの形で検討してから建てます。
古来日本では建築物を職人さんの勘と経験で建てていた時代がありましたが、この構造ってやつを計算する技術が発達してきて、今ではほぼ全ての建物は何らかの方法で構造が検討されるようになりました。
大きな建物は前出の構造設計者が、構造計算を行ってその安全性を確認するのが常ですが、小規模な木造住宅ですと、ちょっとやり方が違ってきます。
もちろん建物の大小に関わらず構造計算をすることはできますし、できればそうすることをお勧めしたいんですが、やはり構造設計者も霞を食べて生きているわけではないので、そうすると設計料が割り増しになってきます。通常木造の在来工法だと設計事務所に設計を依頼した場合、設計料の相場は総工事費の10〜12%くらいでしょうか?(豪邸の場合はもっと率は低くなりますが)これに構造計算が加わると12〜14%くらいになるのではないでしょうか?
えー小さくたって地震でつぶれてもらっちゃ困る!その通りです。では構造計算を頼まない場合はどうなるかというと・・・。
木造住宅の場合は国土交通省の方で様々なデータを元にした構造の略算法が確立されています。余程の変形敷地や、特殊な要素を持つ作り方をしなければ、これである程度の構造的な検討ができますし、実際に大抵の場合はそうされています。ただあくまで略算であるので、バランス的な考えや、地盤強度を含めてその土地の気候風土にあった構造性能を求めるのであれば、多少設計料が高くなっても構造計算をした方がいいと私は思っています。また、略算法ではある程度の安全を見込んで、少し頑丈ぎみに結果が出るようになっているので、構造計算をした方が工事費が下がるというケースもあります。
略算法については、(構造計算する場合も原則は同じですが)建物にかかる地震の力と風による力を出して、それに耐えうるだけの壁の量を計算していきます。その他建物のおよその重さによって基礎を決定したり、時には柱の太さなんかも決まってきます。但し通常の住宅の場合壁全体で支えるという考えですし腐食やシロアリの話を除けば、一番流通している105角か120角の柱を使うのが普通です。