「俺の家なんだからなに建てようと勝手だろうほっといてくれ!」
これもまたおっしゃるとおり。他人に迷惑かけない限りなに作ったっていいじゃないかと思います。しかしこれまた大きなお世話な話も含めていろいろとあるんですね。
・建築基準法の話
どんな土地にどれぐらいの建物が建てられるのかっつー話は集団規定といいます。
社会生活を営むのだからあんまり周りに迷惑かけちゃだめよってのは分かります。
しかーし建築基準法の中には他に単体規定ってものがあるんです。ひとつひとつの建物にも、こうしなさいああしなさいと、口うるさいお母さんのようにいろいろといってくれるのです。こうした方がいいんじゃなーい。ではなくてこうしなさい。という言い方がカチンと来る人には来る事でしょう。
例えば採光制限。人が生活をする部屋には最低これくらいの日の光が入んなきゃだめよってのが決まっています。中には日光の嫌いな人だっているでしょう。ドラキュラ伯爵がいくら窓なしの寝室を望んでも日本では原則あきらめてもらうしかないです。本当に大きなお世話です。
まあちょっとそれは大げさだとして、常識的な範囲で人が生活するにはこれぐらいの環境や安全性が必要だろうというお上の想定によって、例え建て主の意思にそぐわなかったとしても守らなきゃいけない決まりってのがたくさんあるんです。
それでも個人住宅は建物としての規模が小さいし、使う人も不特定多数というわけでもないので大きい建物に比べれば随分と緩やかなもんです。
で具体的にどんなのがあるかというとまず環境関係から
上に書いた採光制限の他に換気の話があります。昔は台所にしか換気扇がなくて、あとは窓を開けて換気すりゃーいいじゃんという建物が普通でした。しかし最近では建材なんかに含まれる化学物質の問題が表面化して、使う建材の種類とそれにあわせた換気量(1時間に何回部屋の空気を入れ替えるとかです)を確保することが法律で決まってしまいました。安全な建材だけしか使わないので窓だけでいいでしょ?とか俺は化学物質に対して極めて強い耐力を持っているのでほっといてちょーだいなんてのは通じません。将来買った家具からも化学物質が放出されるかもしれないでしょ!あとで家売ったりしたら引っ越してきた人はどーすんの!とか怒られます。なんてきめ細かい心配りでしょうか、行政全般にこの心配りが浸透することを祈ります。
つぎに形態関係
これはあんまりありません。ただ全くないというわけではなくて、例えば階段ですが、よくテレビのリフォーム番組なんかで、なんじゃこの急な階段は!!ってのがありますが、建築基準法的には本当はだーめ。階段の幅とか一段あたりの高さとか奥行きの寸法には最低ラインが設けられています。おれは体を鍛えたいから急勾配がいいんだーといってもだーめ。でも本当はそんなことお上に決めて欲しくないとも思うんですけどね。
その他まーちょこちょことはありますが個人住宅の場合、部屋面積の合計が200uを超えない大きさならそんなに気になるものはないです。200uを超えるとどうなるか?そんな贅沢な心配をする人もなかなかいないですよね。200uというのはあくまで部屋の面積の合計なので、延べ床面積が300uとかいかない限りは関係ないっすね。そんな豪邸をお考えの方はご一報ください(笑)。
そんでもって構造関係
あたしゃー超自然派なので、大地震が来たら家がつぶれて死ぬのもそれはまた運命。などとあきらめさせてはくれません。どこかの国ではなにもしなくても自然倒壊してしまった建物もあるようですが、日本ではそんな話はもとより、ある程度の地震ならびくともしないような構造で建物を建てなければいけないことになっています。そんなんお上に言われなくても当然じゃん。その通り!
まあ建築基準法というのはお上に言わせれば、最低これ以上はやりなさいというガイドラインなんだそうで、設計者はこれにプラスしてそれぞれの考えを付け加えていくようになっています。なかにはそこまでやるかっていう要塞みたいな建物を設計したりする人もいます。

以上建築基準法からくる個別の建物への制限の話でしたが、この法律のおかげでわけのわからない建売住宅であっても、何らかのずるをしてない限りは最低限の性能をもったものにはなっているはずです。法律の中身については納得できない部分も多く、日々建築士の間からは改善の提言がなされているものもありますが、ガイドラインとしては一定の成果をあげているとは思います。ただーし、法文が分かりにくすぎ!法律の専門家である弁護士の先生ですら最悪だといってます。一体なんなんでしょうか?一般の人には分かりにくくして、建築士という職業を守っていこうという業界団体からの強い働きかけでもあるんでしょうか?ありがたいことです。国土交通省の方に足を向けて寝たらばちが当たりますね(もちろんいやみですよ念のため)。