「どうすりゃ建築費を安くできるのか?!」
これも永遠のテーマです(笑)。もちろん安かろう悪かろうとは話が違います。よりいいものをいかに安く作るか・・・。どこかの大学の先生は知りませんが、職業として建築設計を行っているものは日夜このことを研究しているといっても過言ではありません。一生懸命に用意した建築予算を1円でも有効に使いたいという気持ちは建主も設計者も同じです。
でもどうしたらより安くできるのか・・・。絶対的なものなんてもちろんないです。あったら教えて欲しいモンです。
ここでは永らく設計をしてきて一般的な話を書いてみましょう。

・全体工事費を安くする
一般論では、早いうちから施工業者を決めてかからない方が安くできます。やはりある程度は競争原理を働かせたほうがいいと思います。ほぼ工事を頼みたい工務店が決まっている場合でももう一社は見積もりをとった方がいいです。但し見積もりをする手間も決してばかにはなりませんので、本命がある場合はできればまずそこから見積もりをとって、金額部分を伏せたうえでもう一社に渡して見積もりをお願いした方がいいでしょう。
ここで気をつけたいのはとにかく安ければいいかといえばそうともいえない部分です。
後述しますが、安かろう悪かろうでは困ります。
そうそうよく建築条件付という土地がありますが、あれはそこの土地を買ったら建築工事は指定業者でやってもらわなきゃならないっていうものです。もちろんそれでは建築価格が下がるのは期待薄です。むしろ建築費で安めに設定した土地の減益分を回収しようとしていますから・・・。
一般に土地契約から工事契約が3ヶ月以内に結べなければ、土地契約も無効になります。全て白紙に戻ってしまえば売り手も元も子もないので、あんまりひどい工事見積もりは出さないかもしれません。
よく建築条件付宅地で設計者を自分で選定できるのか聞かれたりしますが、それは売り手の判断に委ねられます。しかしまともな設計事務所なら設計を始めて見積期間を含め工事契約まで3ヶ月間でなんか絶対できませんので、実質上不可能に近いですね。
どうしても気にいってしまった土地が建築条件付だったら・・・。
粘り強く条件を外してもらえないか交渉しましょう。結構なんとかなる場合もあります。
・材料費を安くする

同じ材料を大量に使用したほうが仕入値も運搬費も安くなるし、加工したときの無駄も少なくてすみます。もちろん将来のメンテナンスも楽ですよね。
更に一般的に流通量が多い材料を使った方が同性能なら安く上がります。あんまり突詰めるとハウスメーカーと変わらないんじゃないかと思われますが、ローコストが上手な建築家は使い場所を工夫しています。床材を壁に使ったり、通常一般に住宅には使われない材料を使ってみたりです。
・工賃を安くする
工賃を安くするといっても、むやみに職人さんに払うお金を減らしてしまうというのは疑問です。いい仕事に対してはそれなりの対価は支払われるべきだと考えます。先述の見積もり合わせで、工賃を異常に低く設定して、現場で素人同然の手が入ってしまってはどうにもなりません。(逆にそれを味わいだと思っていただければ、はなからそういう想定で安くやるという手はありますが)
ではどうするかといえば、まず工事に携わる職種を減らすということです。結構大工さんはなんでも出来たりしますが、やはりそれでも専門の職人が作業しなければいけない部分は多々あります。この職人さんの種類をあまり多くしないようにするれば工賃を抑えられます。これは材料の種類を少なくするのと同じ話ですね。
また作り方や材料の加工方法を工夫するという方法もあります。但しその場合は設計段階から設計者と施工者で綿密な打ち合わせが必要になりますから、先ほど述べた見積もり合わせとは相反する話になります。信頼できる施工者がいて、かなり通常とは違うほどのローコストを目指す場合などはこちらのほうがいいかもしれません。
蛇足
ハウスメーカーのような住宅が欲しい場合はハウスメーカーが安上がり?
いきなり自己否定みたいな話です(笑)。
新興住宅地などに行くとすぐに道が分からなくなります。なぜならどこを見ても同じような家ばっかりが同じように建っているからです(既に住んでる人には申し訳ないです)。ハウスメーカーは独自に一括購入で安く材料を入れるルートを持っていますし、部材も規格化を進めていたりするので、たしかにああいった家が欲しいという場合(そういう人もいるんだと思います)設計事務所に同じようなものを建ててくれと頼むよりは、直接ハウスメーカーに頼んだ方が安くできると思います。
但し建主のこだわりが、規格の外にあった場合はもちろんこの限りではありません。よく雑誌やテレビに出ている建築家が設計したと一目で分かるような建物は、多分ハウスメーカーを経由して建てれば、その方が高くつくと思います。というか作ってもらえないかもしれません。
私はハウスメーカーを一切否定するような事はしません。低価格で高品質な家を建てることを目的としてがんばってらっしゃるところも大多数だと信じます。
但し一般論から言うと次の3点をもう少しなんとかして欲しいですね。
1.ピンハネの率を下げる。(建主から実際に建てる工務店にお金がいくようにしましょう)
2.設計要望をもっと聞く。(設計者一人で20も30も物件をかかえてたらちゃんと施主の希望を形にできるわけないです)
3.設計監理を行う。(工務店マル投げではなくてちゃんと設計の人間を現場に行かせて下さい)
メーカーは安い規格部材を持っていたりとか、様々なノウハウもあるんですから、もっと設計事務所と協力し合って、お互いに建主のためになるようなものをつくれないもんでしょうか・・・。