よく聞かれる質問
設計事務所の業務に関して色々と聞かれることが多いんですが、うちの事務所の考え方を下に示しますので参考にされてください。

工事業者はどうやって決めるのか?
意外と勘違いされている方が多いんですが、設計事務所に依頼した場合工事業者は指定の業者になると思っている方がいらっしゃいます。そういう事はありません。あくまで設計と施工は独立した立場です。中には施工業者とつるんでお金のやり取りをしているような事務所もあるようですが、少なくとも私はそういうことは一切しておりません^^;。
通常設計が終了した時点で何社かの工事会社に見積もりをお願いして、金額と見積もり内容、工事実績などを検討して依頼主と相談するという事になります。あくまで決定権は建主にありますし、もちろん知り合いや親戚が工事会社をしているということであれば、そこを中心に検討を進めていくという事も可能です。最終的には納得のいく価格で、納得の行く工事をしてくれる業者を選ぶサポートをするというのが設計事務所のスタンスです。

敷地購入時にも相談に乗ってもらえるのか?
既に敷地が決まっている方はいいとして、土地を探すところからはじめなければいけない人も多いですね。建築基準法と並んで分かりにくいのが都市計画法^^;。自分の土地なんだから何をどう建てても自由なのかというとそういうわけにはいきません。なかなか土地探しの段階で設計者に相談するといっても敷居が高いかもしれませんが、建物は敷地がなければ建ちません。
不動産屋さんも基本的なことは説明してくれるとは思いますが、様々な法的規制は一般の人には分かりにくいでしょう(専門家であっても調査しなければ分からないこともありますから当然です)。是非土地購入時にも設計者に相談されることをお勧めします。事務所にもよりますが、大抵は親切に相談にのってくれるはず^^。少なくとも私はのります。遠隔地などで調べるのに経費がかかりそうな場合を除いて、多分相談だけならお金取る事務所も少ないと思います^^;。

家を建てる予算はどれくらいを考えればいいか?
●タヌキでも分かるお金の話のなかで・いくらあれば家が建つのかということで、工事費は仕様その他で変わるので一概に言えないと書いていますが、実際に土地の購入から考えるような場合、全体の予算が組めなきゃどうにも話が進まないという方もいらっしゃると思います。
非常に乱暴な話なので坪いくらとかいう話はしたくないんですが、およその目標金額として在来木造で本体工事費は60万円/坪〜+消費税ぐらいと考えられると大体の目安にはなると思います(2020年現在工事費は高騰していて70万円/坪〜で考えたほうが良さそうです・・・以下+10万円ぐらいで読み替えてください)。じゃあ50万/坪は不可能なのかと聞かれれば、それはそれでやれないことはないでしょうし、逆に何をやっても60万で収まるかといえばそういうわけにも行きません。ただ経験上こだわりを持って構法や仕様を選択していった上でもローコストを目指せば坪60万円ぐらいあればそこそこ何とかなるように感じています(設備込)。ただ余裕があるなら70万円/坪は見ておいたほうがいいですね^^;。
これにキッチン(50〜200万円)と家具工事を加えて、設計料は工事費の10%、あとは別途購入する家具やエアコン、忘れてならない火災保険や登記費用、馬鹿にならない引越し代や建替えであれば工事期間中の家賃や既存建物の解体費用(100〜150万円)、他に外構工事や軟弱地盤の場合は杭工事(50〜150万円)なんかも加えていけばいいと思います。
雑誌などに坪単価が出ていたりしますが、どこまでの費用を含んでいるのかは今ひとつはっきりしません^^;(多分設備込みの本体工事費だけでしょうね)。参考にはなりますので試しに一冊購入されるといいかもしれません。

設計事務所はどこも住宅を設計しているのか?
これがなかなか一概には言えません^^;。中規模〜大規模の設計事務所の場合よほどの得意先で無い限りは住宅は設計しないというところが多いです。それはなぜか・・・採算性から見ると住宅の設計は手間の割には収益が少ないということです。事務所の規模が大きくなると経費率もあがれば採算性の管理も厳しくなるので仕方の無いところかもしれません^^;。
逆にうちでは住宅以外はやらないのですかと聞かれたりしますが、別に線をひいているわけではありません。勤め人時代も合わせると実に様々なものを設計させていただきました。病院、老人ホーム、事務所ビル、銀行、学校、警察署、消防署、工場、研究所、倉庫、etc・・・。しかしながら多くの建築家が言っている通り、建築の基本と原点は住宅にあると思っています。

設計料はいくらぐらいか?
設計料の相場は工事費の約10%というのは広く知られているようなんですが、工事規模によって料率が変わるのが普通です。また建物の規模の他、構造、設備の具合などでも変わってきますので一概には言えませんが、うちの事務所では通常は以下の料率をベースにしています。
工事金額 料率(目安)
1000万円未満 15%〜
1000万円以上〜2000万円未満 12〜15%
2000万円以上〜3000万円未満 10〜12%
3000万円以上〜5000万円未満 10%
5000万円以上〜10000万円未満 8〜10%
10000万円以上 6〜8%
※但し構造計算をする場合は計算料が別途かかります。
目安は設計料の更に15〜20%程度です。(2007年の基準法改正で構造設計料は1.5〜2倍程度に上昇しています)
設計料についての追記
国で決めた報酬料の算定基準というものもあります。本来はこれに沿って設計料を決めることが推奨されています。
設計料の算定に当たっては、料率で決めるほかに実際にかかる手間から算定する方法もあり、実はそちらのほうが本式です(国の言う算定基準もそうなっています)。
しかしながら戸建住宅などの小規模物件の場合、実際にかかる手間と経費を積み上げていくとものすごい金額になってしまいます(事業としては採算が合わないのは上にも書いてますね^^;)。不当ダンピングだとも言われそうですが、個人でやるなど業務形態によっては経費を削減できるので、私のところでは可能な限り昔ながらの料率で考えています。

設計料の支払いはいつなのか?
支払い時期は事務所によってまちまちですが、大体進行状況に合わせて2〜5回の分割払いにするのが普通です。うちの事務所では基本的に下記のようにしています。いや、これは理想ですね^^;。実際は自己資金が少ない時など、手付金以外は銀行融資が下りる工事開始後に支払いというケースも多いです。まずはご相談ください。
ついでに工事代金の支払いについても・・・。一般的には工事契約時、建物上棟時(骨組みが出来上がった段階ですね)、竣工時の3回に分けて支払う事が多いです。それぞれの工務店の考え方もありますし、建主側の事情も話した上で契約時に決定していきます。
支払い時期 支払い内容
設計契約時 業務報酬金額の15%
基本設計完了時 業務報酬金額の25%
実施設計完了時(工事契約時) 業務報酬金額の30%
工事竣工、引渡し時 業務報酬金額の30%

設計上のミスで何か問題があった場合はどう補償されるのか?
設計通りの仕様でちゃんと工事がなされれば問題が発生することはあまりありません。工事の問題で何か不具合が起こった場合はもちろん施工会社が補償することになります(住宅の場合、現在では建物の主構造に関するものについては10年間保証されます)。
しかしながら設計者だって人の子。時には間違いもあるでしょう。建設会社や工務店と違って設計事務所は資金力がないところがほとんどです。また設計料の金額に対して問題が起きたときの補償額は割が合わないくらいに高額になったりします。
そこで大半の設計事務所はなんらかの保険に加入しています。設計事務所が所属している団体によって名称はまちまちなんですが(建築家賠償責任保険や建築士賠償責任保険)、一般にはケンバイと呼ばれています。
もちろんそんな保険を適用することが無い様にがんばって設計をしなければいけませんが、建主さんが少しでも安心できるのであればということで当事務所も加入しています。
中には保険に入っていない建築家もいますので、心配なときは契約前に尋ねてみられたらいいと思います。
加入されていない建築家の方は是非加入しましょう^^。

設計にはどれくらいの時間がかかるのか?
建物の規模や構造で変わりますが、一般的な住宅でしたら
基本設計(おおまかなプランなどを打ち合わせます):3ヶ月
実施設計(詳細を実際に図面でおこします):3ヶ月
見積調整(施工会社から見積もりをとります):1ヶ月
で、合計7ヶ月といった感じだと思います。
私はもうちょっと時間をかけさせていただくかもしれません。
特に基本設計はもう少しかけてやった方がいいように思います。

工事にはどれくらいの時間がかかるのか?
これももちろん建物や敷地の状況、時には施工の時期によっても変わってきます。一般的な住宅の場合、ハウスメーカーの中には3ヶ月くらいで作ってしまうところもあるようですが、設計事務所が設計するような住宅は、更地から始めて最低でも5ヶ月くらいはかかると思った方がいいでしょう。

家相については考慮してもらえるのか?
一時期の家相ブームは落ち着いたみたいですが、気にされる方は結構いらっしゃいます。特に商売をされてる方に多いみたいですね(お気持ちは分かります^^)。
もうこれは建築家それぞれで対応が違うと思いますから、気にされる方は計画前に言っておいた方がいいでしょう。
以下は私の考え方です^^。
家相が単なる占いと違うのは経験則に基づいているところですね(占いにもそういうものがありますが)。鬼門(北東)の水廻り禁止は一般諸室との温度差を考えてのことでしょうし、形の欠けがいけないというのは地震時の耐力から来ているんでしょう。
一般論としては理にかなっていることも多いようです。ただ建物や敷地はひとつづつ違いますし、もちろん住まい手の方もそれぞれです。あまりそれにこだわりすぎると他のもっと大切なことが犠牲になってしまうかもしれません。
そうはいっても家相が悪いといわれれば気分は良くないですし、近所や親戚の目もあるかもしれません。計画前に言っていただければ(言われなくてもかな?)他が犠牲にならない限りは基本的な事項を守るのはやぶさかではありません(でも流派によって考え方もまちまちなんですよね)。他に何の要因もなければ自然にそうなっていくかもしれませんし、わざわざ家相が悪くなるようには計画しません^^;。但し基本的に私の場合家相よりその家が持つべき性能と環境を優先させて考えます。
家相を中心に据えた家作りを希望される方は家相の分析を得意にしている建築家に依頼された方がいいかもしれません。

外構工事の設計だけを依頼できるのか?
最近相談が多いのは外構工事だけを設計事務所に依頼する事はできるのかという話です。建築条件付の敷地を購入された方やハウスメーカーで住宅を建てようと言う方でも、外構がどうにも納得できないという方が多いようです。もちろん出来る場合もあります。が、やはりそこは餅は餅屋。特に植栽なんかが多い場合は専門の方に依頼された方がいいと思います。(出来た後での手入れの話もあるので・・・)
ここでは熱い魂を持った方を紹介しておきましょう。
庭園空間ラボ
外構にこだわられるのはもちろんすばらしいことですが、建物の方にももっとこだわっていきましょう^^;。

建築条件付敷地を購入した場合でも設計を依頼できるのか?
これはなんともいえません。通常建築条件付ということは施工会社が決まっているということですね。もちろん原則的には施工会社が決まっていても設計は他に依頼出来そうな感じがします。しかしながら土地契約から3ヶ月以内に工事契約を結ばなければいけないというケースが殆どですから、設計期間のところで書いたように、そんな短期間でまともな設計はできるとも思えませんので、結果的には不可能と考えた方がいいでしょう。
施工会社は指定の上で、きちんと時間をとって外部の設計事務所に設計を依頼するというケースもあるようですが(本来の条件付からはイレギュラーになります)、総じて工事費は高くついてしまうことが多いようです。
どうにも土地が気に入ってしまったという場合はどうしたらいいのか?そんなときは建築条件をはずしてもらえないか交渉してみる他ないでしょう。
施工側から見ればとかく設計事務所は煙たい存在です(そうではない施工会社もありますが)。ちゃんとやっている事務所であれば基本的には施主側の立場で物事を考えますから、専門知識をもった面倒くさい施主が一人増えたみたいなもので、できれば関わって欲しくないと思っているところも少なくありません。
また、条件付の場合、建築工事での儲けを見込んで相場より安価に土地を販売している場合が多いので、条件を外してもらうには価格面でも交渉が必要になると思います。
建築条件付敷地は、そのままでは、ある程度プランと仕様に自由の効く建売住宅という風に考えた方がいいかと思います。